「Zeitschichten」
ドイツ庭園博覧会/デュッセルドルフ、ドイツ/1987年5月~10月/土、煉瓦粉

デュッセルドルフで開催されたドイツ庭園博覧会(BUGA)*の企画として行なわれた、美術アカデミーの学生たちによる野外彫刻展での参加作品で、会期中公開制作された。かつて煉瓦工場があったという丘陵地に、2か所平行に三角形に穴を掘り、その上に全体が2等辺三角形になるように掘った土を積み上げていった。毎日、煉瓦の粉末を積層させて突き固めていくことにより、掘られた地面(凹三角形)に生じる堆積層と、積み上げられた面(凸三角形)に生じる人工の層との対比が見られる。1か月にわたる公開制作の後は、三角形の先端部から崩れはじめたが、会期中は原型をよく留め、博覧会終了後も長らく作品の痕跡を残すこととなった。

*ドイツ庭園博覧会(Bundesgartenschau)は、第2時大戦後に荒廃した公園を整備する目的で始められ、ドイツ各都市を巡回して行なわれている。1987年にデュッセルドルフで開催されたドイツ庭園博覧会(Bundesgartenschau)では、新しく造成された公園(Suedpark)内に、美術アカデミーの教授たちによるパブリックアートも数多く設置された。博覧会会期中1年間は有料で数多くの催しものが行なわれ、その後、入場無料の公園として提供され、市民に親しまれている。

「Zeitschichten」
「個展」/ギャラリーアクイレイア、トュン市、スイス
/1989年2月/ミクストメディア(木、綿布、油彩、顔料、石膏、蝋)

ベルン近郊の小都市トュンの画廊での個展。トュン湖に注ぐ運河に面して建てられた古い木造の建物で行なわれた。壁の平面作品では、マロニエの樹に綿布をあてがい表面をフロッタージュし、さらに木立の隙間や立ち木に出来た洞(うろ)の形に添って描画(線)を加えて間をうめている。そこでは、自然に形成された形に新たな行為(描画作業)を付与することで、自然と人為の重ねあわせによる画面が形成されている。他に、同様のコンセプトにより木材の裂け目、割れ目などに鑞(ロウ)や石膏を塗り重ねて層を付着させた小作品(立体)を発表した。



「Zeitschichten」
ゲーヴェルスベルク市、ドイツ/1989年2月/砂岩、コンクリート、顔料

ヴッパータール近郊の小都市ゲーヴェルスベルグ市のモニュメント*。作品タイトル「Zeitschichten」は、訳せば「時層」となる。この地方特産の黄色い砂岩で一辺2mの立方体を取り出し、その塊を上下に2分した後、真ん中に同じ体積分のセメントの層を挿入する。赤白のストライプは白セメントと、砂岩に含まれている酸化鉄(赤色顔料)を交互に踏み固めて重ねて作られた。体積が倍になった直方体(高さ4m)の塊を縦にくさび(せり矢)で2分して、左右に開いた形で設置された(プランドローイング参照)。制作は、ゲーヴェルスベルグ市土木課の全面的な協力の下に行なわれた。この作品では、砂岩表面に見られる酸化鉄や石炭の縞模様と、制作日数分のストライプという自然および人為による積層された時間の相に対して、くさびにより割り開く瞬間的な時間の相を対比的に見い出すことが出来よう。

*ポーランドからの出稼ぎ労働者であったヴァシル・セニュウ氏が、長年暮らしたゲーヴェルスベルグの町に、若い芸術家によってモニュメントを作ってもらいたいと申し出て多額の寄付を行なったことから、デュッセルドルフ美術アカデミーの学生10名による指名コンペが行なわれて受賞(2位)し、実現された。ゲーヴェルスベルグ市はルール工業地帯に属し、ヴァシル・セニュウ氏が働いた炭坑や鉄鋼業で栄えたことから、コンペでは地場産業を利用することが条件となっていた。

「Zeitzeichnen - 時の刻印 -」
サイズ:高 1,650 × 幅 2,490 × 厚 10 mm/1996年
素 材:アクリルガラス、エポキシ樹脂に油彩